「アンドレ、何を作っているの?」
「ん?紙飛行機」

颯爽とした風が吹き抜ける庭で、古い新聞を使って器用に紙飛行機を作り上げるアンドレの手に オスカルの目はくぎ付けになった。
「ぼくもやる!」
そう意気込んでオスカルも紙飛行機作りに参戦したものの、アンドレの作るそれのように スラリと風にのる形になかなかできない。四苦八苦する相棒を横目に、アンドレは紙飛行機になにやら 一生懸命考え込みながらメッセージを書いていた。英語のようだ。

「それ、どうするの?」
「もちろん、飛ばすんだ」
「どこに?」
 あそこに、とアンドレは青い雲にぽっかり浮かんだ入道雲を指差した。

「あの雲の向こうに、きっと見たこともない島が浮かんでいるんだ。おれは飛ぶことできないけど、 こいつならきっと行ってくれる」

「だから英語書いてるんだ」
「うん。もしかしたら返事がかえってくるかもしれないよ」
 アンドレはいつもの優しい笑顔に、ほんの少し冒険心を添えた。それがなんだかとても素敵で、 オスカルは胸がドキドキした。

「アンドレ」
「ん?」
「なんかわかった。アンドレが飛ぶ島が好きなわけ」
「そう?」
「うん。で、父上の言っていたこともわかるような気がする。だってね、ぼくは英語が得意だけどアンドレは まだそうじゃないし、アンドレは紙飛行機作るの上手だけど、ぼくは苦手なんだもの」

 アンドレはニッコリと微笑むと、オスカルの手を引き元気良く駆け出した。
「さあ、いくよ、オスカル!」






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