一番会いたくない相手に出会ってしまった。
夜勤だったんだ、あいつ…
「今、帰ってきたのか?」
「あ、あぁ…」
「どこへ…行っていたのだ?」
「昨日…帰りに知り合いに会って、
パリへ…遅くなったんで
泊めてもらったんだ」
「そうか。心配するぞ…ばあやも」
「…ああ」
「知り合いに会って」「パリへ」
「泊めてもらった」 嘘じゃない。
「おまえだってもう18だろう」
別にそんなこと、考えていたわけじゃ
なかった。それでこの気持ちが少しは
紛れるんじゃないかと思った。
だけど…
「おまえも男だろう、皆やってることさ」
そうさ、別に悪いことをしたわけじゃない。
だけど…
さっき、おまえの目を見られなかった。
子供でももうちょっとマシな言い訳を
言うんじゃないか。
言い訳…おまえだって気がついたはずだ。
今も纏わり付く安物の香水の匂い。
どんなに洗ってもとれないような気がした。
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