「ある日」のアンドレ

文:もんぶらん様  絵:カオル


今日はおまえに小さな嘘をついた。
悪戯心が頭をもたげたのは確かだが、
囁いた言葉は戯れじゃない、本気だよ。

俺の中の男の部分は昔と変わらずお前を求めて血を流す。
ふざけて握ったおまえの柔らかな手。
あのままいつまでも離さずにいたかった。

我が隊長殿と呼ぶ時は、隊長殿を心の中で
最愛の女性(ひと)と置き換える。

長い時間をかけてこの恋情を制御する術を身に付けてはきたけれど、
おまえは日に日に魅力的になっていくから、何時までたってもいたちごっこ。
防壁を積み上げ続けなければ追いつかない。

いいさ、おまえの傍にいるためなら、そのくらい。

でもこの頃おまえは俺の胸を荒っぽく火かき棒でかき回す。
今日だって俺にカマをかけて勝ち誇るおまえの顔が、
なぜか泣き顔に見えたのは気のせいだろうか。
ゲームで勝った時のおまえの勝利を宣言する表情。
幼い頃からなじみのその顔は、俺の気に入りの一つではあるけれど、
今日のそれは同じに見えてまるで違っていた。

勢い余っておまえを壁際に追い詰めた時、おまえが俺に向けた瞳。
信じられないほど切なく焦がれる色が浮かんでいたように見えたのは
俺の恋心が見せた幻想なのだろうか。多分そうなのだろう。
それでも気がついた時にはすでにおまえの身体に腕を回してしまっていた。
だからあんな風に乱暴におまえを扱って、かろうじて抱擁せずにやり過ごした。

おまえから火の粉が飛んでくるようだ。
とうとう俺も恋しさあまり幻覚を見るようにでもなったのか。

それでもなお。

おまえが俺に与えてくれた贈り物は恋の痛みを補って余りある。

オスカル

おまえの目に触れるもの、
おまえが手に取るものおまえを喜ばせるもの、
おまえが求めて止まない理想
おまえが生きているこの世界、
おまえごとひっくるめて全てが愛しくて大切でたまらない。

おまえを想うあまり、愚かなまねをした。自虐的な生き方もした。
そんな過去すらも、愛することそのも
のが、こんなに深い喜びをもたらすことを知るために必要な過程だったのだ。
だからあまり立派ではなかった俺の辿った道筋にさえ感謝の念が沸き起こる。
おまえは俺をこんなに素晴らしい人生に導いてくれた。

おまえが居てくれた事が、どんなに俺の人生を豊かにしたか、
どんなにこのめぐり合わせに感謝しているか、
これほどまでに愛するものを持てる幸せと喜びがどれだけのものなのか、
どう言い表わせばいいのだろう。

いつか―

恋の痛みも全て喜びに昇華させることができたなら、
この思いをおまえに伝えたい。
かつての俺の激情はおまえを傷つけたけれど、
喜びと幸せだけで満ち足りている俺ならば、もうおまえを
傷つけることはないはずだから。

願わくば死の床に横たわるその日が来るその前に。

fin






あとがき


あの拙絵2枚からの「ある日」だけでも驚きでしたが、もんぶらん様がさらにその続きを合わせて 書いてくださいました!! テンポと間合いのいいやりとりで本心を隠しているかのような「ある日」が オスカル様の心情ならこちらはそのアンドレ編です。
この文章に合うような、できるだけかっこいぃ〜アンドレ一枚で出させていただこうと 頑張ってみましたが…。
とにかく画面の向かって左側を注視なさってください!
もうふたりとも早くブレイク?して〜〜な私でした(笑)
もんぶらん様、本当にありがとうございました〜!